Research Tool
ATCG以外の文字が含まれています。
PCRのアニーリング温度を検討するために、プライマーのTm値を計算できるツールです。上の入力欄に配列を貼り付けると、塩基長・GC%・Wallace法・最近接塩基対法のTm値がすぐに表示されます。
使い方
配列(例:ATGCGTACGTAGCTAG)を入力するだけで、次の値が自動計算されます。
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塩基長(Length) と GC%
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Wallace法 による簡易Tm
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最近接塩基対法(Nearest-Neighbor法) によるTm
相補鎖配列も同時に表示されます。空白や改行は自動で取り除かれるので、配列をそのまま貼り付けて構いません。A / T / G / C 以外の文字が含まれている場合はエラーになります。
なお本ツールの最近接塩基対法は、プライマー濃度 0.5 µM・Na⁺ 50 mM を条件として計算しています。
Wallace法と最近接塩基対法の使い分け
同じ配列でも計算法によってTm値は変わります。用途に応じて使い分けます。
Wallace法(簡易法)
塩基数だけで求める簡便な式です。短い(〜14塩基程度)オリゴの目安には便利ですが、配列の並びや塩濃度を考慮しないため、長いプライマーでは誤差が大きくなります。
最近接塩基対法(Nearest-Neighbor法)
隣り合う塩基対のスタッキング(ΔH・ΔS)や塩濃度・鎖濃度を考慮する、より正確な方法 です。PCRプライマーの設計では基本的にこちらを参照するのがおすすめです。
計算例:同じ配列でどれだけ差が出るか
実際に上のツールで計算した値です。そのまま入力して確認できます。
| 配列 | 長さ | GC% | Wallace法 | 最近接塩基対法 | 差 |
|---|---|---|---|---|---|
ATGCGTACGTAGCTAG | 16 | 50.0 | 48.0℃ | 48.7℃ | +0.7 |
ATGGCTAGCAAGGATCTGA | 19 | 47.4 | 56.0℃ | 59.9℃ | +3.9 |
TTGACGTCAATGGGAGTTTG | 20 | 45.0 | 58.0℃ | 63.5℃ | +5.5 |
AAATTTAAATTTAAATTTAA | 20 | 0.0 | 40.0℃ | 45.2℃ | +5.2 |
GCCGGCGCCTGCAGGTCGAC | 20 | 80.0 | 72.0℃ | 80.3℃ | +8.3 |
短いオリゴでは両者はほぼ一致しますが、長くなるほど、またGC含量が偏るほど差が開きます。 20塩基のプライマーでWallace法の値をそのまま使うと、5〜8℃ 低く見積もることになります。
Tm値からアニーリング温度を決める
アニーリング温度(Ta)は、プライマー対の低い方のTmから 5℃ ほど下げた値 を目安にします。
Ta ≈ Tm − 5℃(プライマー対の低い方のTmを基準にします)
例えばプライマー対のTmが 60℃/62℃ なら、低い方の 60℃ から 55℃前後を出発点にし、増幅が弱ければ下げ、非特異バンドが出れば上げて最適化します。
プライマー設計の目安
Tm値と合わせて、次の条件を満たすと安定したPCRになりやすいです。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 長さ | 18〜25 塩基 |
| GC含量 | 40〜60% |
| Tm値 | 55〜65℃ |
| ペア間のTm差 | 5℃以内(できれば2℃前後) |
| 3’末端 | G/Cで終える(GCクランプ)と伸長が安定 |
同じ塩基の4連続以上や、プライマー同士・自己相補(ヘアピン)はできるだけ避けます。
よくある質問
Q. Wallace法と最近接塩基対法、どちらを見ればいい? PCRプライマーの設計なら最近接塩基対法が正確です。Wallace法はごく短いオリゴのざっくりした目安に向いています。
Q. アニーリング温度は何度にすればいい? プライマー対の低い方のTmから約5℃下げた温度が出発点です。あとは増幅結果を見て±で最適化します。
Q. 計算サイトによってTm値が違うのはなぜ? 最近接塩基対法の熱力学パラメータには複数のセット(SantaLucia 1998、Breslauer 1986 など)があり、さらに塩濃度・プライマー濃度・Mg²⁺補正の既定値もツールごとに異なるためです。同じ配列でも数℃の差が出ます。絶対値をツール間で比べるより、同じツール内でプライマー対のTm差を揃えることの方が実用上は重要 です。本ツールはプライマー濃度 0.5 µM・Na⁺ 50 mM を条件としています。
Q. Tm値はどのくらいを狙えばいい? 一般には 55〜65℃ が目安です。ただし絶対値より、フォワードとリバースのTm差を5℃以内(できれば2℃前後)に揃えることの方がアニーリング条件を決めやすくなります。
Q. GC含量はTm値にどう影響する? G–C対は水素結合が3本、A–T対は2本なので、GC含量が高いほどTmは上がります。ただしGC含量が60%を超えると二次構造や非特異増幅が起きやすく、40%を下回るとTmが不足して特異性が落ちます。40〜60%に収めるのが目安です。
Q. 塩濃度やプライマー濃度でTm値は変わる? 変わります。Na⁺濃度が上がるとDNAのリン酸骨格の負電荷が遮蔽されて二本鎖が安定化し、Tmは上昇します(計算式の log[Na⁺] の項)。プライマー濃度も ln(C/4) の項として効きます。Wallace法はこのどちらも考慮しません。
Q. TaqManプローブのTm値も同じ計算でいい? 配列からTmを求める計算自体は同じですが、設計の目安が異なります。加水分解プローブは、プライマーより 5〜10℃ 高いTmになるよう設計するのが一般的です。
Q. 縮重塩基(N、R、Y など)を含む配列は計算できる? 本ツールは A / T / G / C のみを受け付けます。縮重塩基を含むプライマーでは、最もGCが高くなる組み合わせと最も低くなる組み合わせの2通りを入力し、Tmの上限と下限として見積もる方法があります。
参考記事
計算の中身をPythonで実装したい方は、こちらの連載もどうぞ。